「奈良新聞」

平成16年(2004年)7月25日

生前に遺したエッセー集

絆 石ノ森 章太郎・著 2100円
 本書は著者が生前に遺(のこ)しておいたエッセー集で、半自伝的要素を含んでいる。著者は根っからのマンガ人で晩年はみずから「萬画家」を自認、宣言した。
 第二章の「トキワ荘紳士同盟」はなかば伝説化し、集まってくる当時のマンガ家の俊英たちをまぶしく描いている。そこは文字どおり新漫画党の梁山泊であったのである。第四章は「僕のモーレツ時代」で、「サイボーグ009」誕生話が語られている。その中にはかつて夢中になってみた「おそ松くん」「パーマン」「佐武と市捕物控」「怪物くん」などの名前が出てきてなつかしがらせる。そのスタジオ・ゼロの社長が、この石ノ森章太郎だったのだ。
 彼が書いた作品の中には、最長の連載になっている「HOTEL」があるが、あれはもともとマンガだったのだ。その他「マンガ日本の歴史」も、小学校の歴史の先生が買って読んだというから相当なものだ。また「マンガ日本経済入門」は、経済学者が書いてもよくわからない理論を具象化した点で異才ぶりを発揮した。巻末の矢口高雄「銀行マンの夢」が楽しい。(文芸評論家・嘉瀬井整夫)

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