平成18年(2006年)8月30日(水曜日)
蔵の中 大石 恭平 著
家族との絆、老い・・・小説に
定年退職後、小説執筆に本格的に取り組み始めた大分市中島西の大石恭平さん(75)が、自身二作目となる短篇集「蔵の中」を出版した。収録した七編はいずれも県内が舞台で、家族との絆、老いなどのテーマを自らの体験を踏まえ作品化した。大石さんは「半ば自分史のつもりで取り組んだ。今後も書き続けたい」と創作活動にさらなる意欲を燃やしている。
大石さんは旧制中学卒業後、九州電力に入社し定年まで勤め上げた。社内文芸誌に小説を発表したこともあったが、本格的な執筆活動に入ったのは会社勤めを終えて故郷大分に戻ってから。一九九五年に文芸誌「日田文学」の同人となり、短篇を年二作のペースで発表してきた。
五年前のデビュー作「風の往還」(日田文学社刊)に続く二作目には、女性使用人と少年の交流を描いた表題作のほか、「城址」「夏足袋」「孤食のあと」「山村留学」などを収録。「城址」は大手建設会社技師だった男性ホームレスの失踪をめぐる謎を、高度成長期に全国でトンネル工事に携わった出稼ぎ労働者や、約四百年前の府内城築城時の悲話を絡めて描いた意欲作だ。
「夏足袋」は明治生まれの義母の介護に妻と取り組む主人公が、一度も素足を見せることがなかった義母の秘密を知った際の心理を、繊細な文体で描いている。七年前に九十七歳で亡くなった義母トヨシさん、五年前に六十八歳で逝った妻多喜子さんをそれぞれモデルにしたという。
大石さんは「いろんな方に助けていただいた。今後はエッセーにも取り組みたい」と話している。