『お酒の大好きなおじいちゃんへ』   


中日新聞夕刊 社会面より
       平成19年(2007年)9月20日

アルコール依存は治る
  四日市の作家が絵本で訴え
     実父の治療体験 基に出版
       
                            

「アルコール依存症は治せる病気。多くの人に知ってほしい」―。
国内に80万人の潜在的な患者がいるとされる同依存症をテーマにした絵本「お酒の大好きなおじいちゃんへ」を、三重県四日市市の作家伊村俸一さん(38)が出版した。登場する依存症の老人は自身の父親がモデル。支える家族のつらさを知る伊村さんは「患者の人たちが治療に向かう第一歩につながれば」と希望を込める。
 

 鋳物職人だった父(69)は、伊村さんが物心ついたころから大の酒好き。昼間から酒を飲んでは路上で寝て警察の世話になったこともあった。
 父は2000年、津市にある専門の治療施設に入院したが、酒を飲むために施設を抜け出すなど問題続き。伊村さんは疲れ果て「なぜ、自分だけがこんなに不幸なんだ」と一時はうつ状態にもなった。
 3年かかって退院した父は、現在は四日市市内の老人ホームで暮らす。伊村さんは、治療施設で患者やその家族、治療に奔走する職員たちを見て「病気について知り、父を理解しようとする意識が芽生えた」と言い、分かりやすく伝えるため絵本にすることに。
 断酒会に参加して患者や家族らを取材、父がモデルの老人と祖父を気遣う孫の男の子のやりとりをコミカルに描いた。絵は知人の似顔絵師、桜井花子さん(30)が担当した。
 絵本では、治療をかたくなに拒んでいた老人が、最後には家族の苦労に気づき、自ら病院へ行く。伊村さんは「実際の患者の家族からは「こんなに甘いもんじゃない」とも言われた。でも、ハッピーエンドにしたのは希望を託したかったから」。
 できた原稿は父にも見せた。「これ、わしのことみたいやなあ…」。しんみりとつぶらく姿に、物語に込めたメッセージが伝わったと感じた。
 当時の父の主治医で、全日本断酒連盟顧問の猪野亜朗医師は「症状が進めが人生が崩壊することもあり、絵本のように軽いうちに回復するのが理想。苦労した伊村さんは、絵本でそれを伝えたかったのでは」と話す。
 「自覚がなくても予備軍はたくさんいる。団塊世代や、中学生など若い人にも読んでほしい」と伊村さんは言う。