『新ロビンソン物語』  


讀賣新聞 読書欄
  評者・松永美穂(早稲田大学教授)
       平成19年(2007年)3月4日

 D・デフォーの『ロビンソン・クルーソー』(1719)がヒットした後、ヨーロッパでは似たような題材の「ロビンソンもの」が大流行した。本書もその1冊なのだが、18世紀後半に出版されるや数十版を重ね、オリジナルを上回る大ベストセラーになったそうだ。ロビンソンが何の道具も持たずにサバイバルしなければならなかった点や、職人としてつつましい余生を送る点など、オリジナルとの違いを探してみるのも一興だろう。物語は父から子どもたちへの語り聞かせの形で進行し、随所にキリスト教的教訓や当時の博物館の知識などがちりばめられている。北ドイツ的なプロテスタントの信仰と、人間の理性への信頼がまだ調和しており、労働や手仕事の価値も賞揚されている。著者はゲーテとほぼ同年代の人だが、ファウスト的人間像とはまた違う明るい世界。理想的すぎる子どもの姿や西欧中心主義には、時にツッコミが必要かも。