『イタリア語で好きだと言って』   


神奈川新聞 読書欄より
       平成19年(2007年)2月11日

都市の魅力を小説仕立てで       
                            

 「バラ色の大理石って素敵」「オペラ好きにはナルシストが多い」といった会話が随所に出てくる。ローマ、フィレンツェ、ミラノなどを背景にこういう利いたセリフを聞かされると、キザがキザでなくなる。
 著者(横浜市)は企業の広報室長さん。よほどイタリアにほれ込んでいるのだろう。この国の魅力をなんとか立体的に伝えたい、それにはいっそ小説仕立てにしたら書く側だって楽しい、と思い立ったのが執筆のきっかけではないか。歴史、住民気質、人間関係、都市事情の「ひだ」に迫ろうとするのに、通常の叙述より会話のほうが効果は大きいのかもしれない。
 作中、12歳の少年「シンペイ」と若い両親との会話は高尚で知的で品がよすぎるくらい…いい。前半はややガイドブック風に傾きかけるが、後半になって13歳のイタリア少女「カティア」との淡い恋模様が進むにすれ石畳を踏む音と響き合ってフィクションとして成功した。イタリア人の性格づけが深く、ステロタイプでないのがいい。
 「シンペイ」がサッカーの試合に出してもらう場面に注目した。チームメートに対する観察が鋭い。心理を推し量るのをあえて避けたあたりに著者の「芸」の力がある。