呉服店からデパートへ――変貌の軌跡
漫画で「松坂屋物語」
46冊目は生まれ育った名古屋にちなみ
50周年の画業記念 森哲郎さん(78歳)
パーティーで100人が出版祝福
名古屋市守山区にアトリエを構える漫画家、森哲郎さん(78)が、漫画家50周年を記念し「マンガ松坂屋物語 江戸時代から四百年―」を出版した。社会的なテーマを多く手がけ、名古屋を題材にした作品が少ないと思い、「生まれ育った名古屋にちなんだものを」と老舗百貨店・松坂屋の歴史を取り上げることにした。今回で46冊目の出版。22日には市内でパーティーが開かれ、約100人が森さんを祝福した。 【樋岡徹也】
「松坂屋物語」は、慶長16(1611)年に創業した「いとう呉服店」が、安政の大地震や関東大震災、太平洋戦争を乗り越えて百貨店・松坂屋へと生まれ変わる軌跡を、ユーモラスなイラストや写真を交えて描いている。
名古屋市昭和区で生まれた森さんは、幼少のころから休日のたびに中区の松坂屋まで遊びに出かけた。「エレベーターガールや案内嬢が登場したり、ファッションショーが開かれたり。松坂屋がたどった400年近くの歴史は、日本近代史の縮図」と説明する。
松坂屋から借りた膨大な資料を読み解き、7月から3カ月かけて執筆。物語には、名古屋のメーンストリート・広小路通に百貨店を建てようと考えた松坂屋の初代社長・伊藤祐民氏が、父・祐昌氏や古参社員らに猛反対されながらも、「時代の進歩に遅れを取ってはならない」との強い信念で押し切った場面も。1910年、名古屋で初めての百貨店が誕生したこの出来事を、「呉服店からデパートへと変貌を遂げる、何ともドラマチックな瞬間」と話す。
60年代、漫画週刊誌に「サラリーマン太閤記」などを連載。故手塚治虫氏らと長編漫画研究会も結成した。だが、「もうかるナンセンス漫画ではなく、自分が描きたいものを描く」と70年代に入ってからは作風を社会派に転向。「秩父事件」「日本国憲法・五部作」などの作品を描いてきた。名古屋に関しては、堀川の歴史や浄化運動などを紹介した「堀川まんが図鑑」も出版している。
この日のパーティーには森さんと親交のある地元各界の代表ら約100人が出席。森さんが「50年の節目に子供のころから親しんだ松坂屋の歴史を描くことにした。11年に創業400年を迎える松坂屋の店頭に並んでいるくらいのロングセラーにしたい」とあいさつした後、出席者全員で乾杯して祝福した。